体力とは何なのか?体力の再確認

体力と言うワード

『君は体力があるね!』これはどこでも良く聞くワードです。しかし、このワードには沢山の意味が含まれており、我々トレーナーはただ単に
『スタミナがある=体力』があると勘違いしてはいけません。スタミナがあって運動が沢山出来ていても、1ヶ月に1回は風邪を引くようでは体力としては決して高くありません。風邪をひくのは仕方ないと言われますが、決してそんな事はありません。
今回は体力の構成要素を理解して、自身の体調管理やトレーニング指導にお役立てください。


体力は『身体と精神』の両面から構成される

まず大きく分けると、『身体体力』と『精神体力』の二つに分類できます。その分類の中にも『行動体力』『防衛体力』というものに大別されます

  1. 身体体力:

    • 行動体力:身体的な活動を行う際に必要な体力のことです。これは、運動能力や筋力、持久力などが含まれます。例えば、走る、跳ぶ、持ち上げるなどの動作を行う際に必要とされる体力が該当します。この要素は、身体を動かすためのエネルギーや筋肉の働きに関連します。

    • 防衛体力:身体を守るための体力です。これは、免疫力や耐久力、病気や怪我から身体を守る力などが含まれます。免疫系の働きや身体の修復能力が、この要素に関わります。防衛体力が高い人は、感染症や怪我から回復しやすくなります。

  2. 精神体力:

    • 行動体力:精神的な活動を行う際に必要な体力のことです。これには、集中力や意志力、ストレス耐性などが含まれます。例えば、長時間の集中作業やストレスの多い状況に耐える際に必要とされる体力が該当します。この要素は、精神的な活動を支えるためのエネルギーや心の強さに関連します。

    • 防衛体力:精神的な安定や精神的な負荷から身を守るための体力です。これには、ストレス管理能力や心のバランス、精神的な回復力などが含まれます。ストレスや精神的なプレッシャーに対する耐性が、この要素に関わります。防衛体力が高い人は、精神的な負荷によりダメージを受けにくく、よりバランスの取れた生活を送ることができます。


身体体力の行動体力

行動体力は、さらに細かく以下の要素に分類されます。これらは『形態』と『機能』として分けて考えられます。形態は心臓や骨格等を指し、機能は筋肉の強さや柔軟性等を指し示します

  1. カーディオバスキュラー(心臓血管)健康:心臓と血管の健康状態が含まれます。心臓が効率的に血液を送り出し、血管が柔軟で健康な状態を保つことが重要です。これによって、運動中や日常生活での体力を維持し、心臓病や血管疾患のリスクを低減します。

  2. 筋力と筋持久力:筋肉の強さと持久力は、身体を動かすために必要です。筋肉は体を支え、運動を可能にします。適切な筋力と持久力があると、日常生活での動作や運動により効率的に参加できます。

  3. 柔軟性と可動域:身体の関節や筋肉の柔軟性と可動域が重要です。柔軟性が高いと、身体の動きが滑らかで制限されず、怪我のリスクが低減します。また、日常生活での動作やスポーツパフォーマンスが向上します。

  4. バランスと協調性:バランス感覚と協調性は、身体の安定性とコントロールに関連しています。良好なバランスと協調性があると、姿勢が良く、日常生活や運動中における転倒のリスクが低減します。

身体体力の防衛体力

防衛体力は、身体を病気や怪我から守るための『器官の構造』と『機能や能力』を指します。これには、免疫系や身体の修復能力、健康状態を維持するためのさまざまな生理的プロセスが含まれます。以下に、身体体力の防衛体力をさらに細かく解説します。

  1. 免疫系:免疫系は、身体を病原体や異物から守るための重要な役割を果たします。免疫系は、体内に侵入したウイルス、バクテリア、その他の病原体を検知し、攻撃することで感染症や疾患を防ぎます。免疫系の機能は、白血球や抗体などの細胞や分子によって支えられています。

  2. 組織修復能力:身体は常に外部からのダメージや怪我にさらされていますが、これを修復する能力が重要です。組織修復能力は、傷ついた細胞や組織を修復し、健康な状態を保つためのプロセスです。細胞分裂や再生、炎症反応などが、組織修復の一部です。

  3. 代謝機能:代謝は、身体内で栄養素を利用してエネルギーを生成し、細胞や組織の機能を維持するためのプロセスです。健康な代謝機能は、身体のエネルギー供給や修復プロセスをサポートし、健康を維持するために重要です。

  4. ストレス応答:身体はさまざまなストレスに対応する能力を持っています。ストレス応答は、身体がストレスに適切に対応し、ホルモンや神経のバランスを保つためのプロセスです。適切なストレス応答は、免疫機能や健康状態を維持するのに役立ちます。

これらの要素が組み合わさって、身体を病気や怪我から守るための防衛体力を構成しています。健康な防衛体力は、身体の健康状態を維持し、疾患や外部の脅威から身を守るのに役立ちます。

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体力を分かりやすく表現する方法

つまり一言に『体力』と表現しても様々な要素が絡み合った結果として体力が構成されています。
体力を向上させる為には『適切な休養』や『運動後のクールダウン』なども体力を作る要素の一つに関わっているという事も事実です
そして当然ながら、体を保温したり、リフレッシュの為の息抜き、負担をかけない生活習慣なども、大きな影響を与えるという事です
これらを総括して『リービッヒの最少律・ドべネックの桶』として考えるとイメージしやすくなります
以下に詳しく解説しています。野球の走り込みは必要か?も解説しています


まとめ

体力は何も年齢が高くなると落ちる訳ではありません(加齢は必然ですが、老化は病気です。老化には年齢は関係ありません)
70代でとても活発で1日1万歩いても余裕な人もいれば
30代で階段を3階分上がる事もキツイ様な人もいます。
これらは生活習慣の乱れや栄養不足・睡眠不足で力が発揮できなくなり、脳の機能が低下している事による体力の低下と表す事が出来るでしょう
それ以外にも人より多く動けるが、一年間に10回以上の風邪をひくような場合は免疫機能の体力が少なく、何度も『関節の障害(使い過ぎのケガ)』を起こす場合は、関節柔軟性の体力構成が低いと考えられます。このような場合もただ単に『なったから仕方ない』と考えるのではなく、その前後の生活習慣や食事・睡眠時間の見直しや日頃からの体のメンテナンスやケアが必要となるでしょう

このように、体力という考えを『多角的に見る』事で、指導の幅は大きく広がっていきます。